韓国弁護士が語る韓国企業とのM&A手続き:企業結合の届出

日本企業の海外営業強化に伴い、海外での株式取得、合併、事業買収等の企業結合が増加しています。この場合、世界の各国は企業結合が自国の競争市場に及ぼす否定的な影響を防止するために企業結合の届出制度を運用しています。韓国の場合も変わりません。つまり、日本企業が韓国企業に対するM&Aを行う場合はもちろん、日本企業が日本国内または韓国以外の地域での企業結合を行う場合にも、それが韓国現地法人などの韓国内の営業と関連性があれば、韓国政府に企業結合届出をする義務が生じる可能性がありますのでご注意が必要です。

世界各国の企業結合の届出制度

まずは、韓国の場合と対比される米国と日本や各国の制度を確認して見ましょう。

米国

米国の場合、クレイトン法(Clayton Act)第7条によって、他社の株式またはその他の持分、資産の全部または一部の取得が競争を実質的に制限する効果がある場合、これを禁止しています。たった一つの株式の取得としても競争制限性があればクレイトン法が適用され、取得会社が相手会社の支配力まで取得したのかは問わないのが特徴であります。

EU

EU合併規則の第3条は、合併や株式の取得などの方法で、他企業の全部又は一部に対する直接·間接的な支配力を獲得する場合を、企業結合審査の対象と定めている。

中国

中国の反独占法は、合併、株式または資産の取得、契約などの方式による支配権あるいは十分な影響力の取得を経営者の集中申告対象と規定しています。

日本

日本の独占禁止法は一定要件の株式取得、役員兼任、合併、分割、共同株式移転、営業譲受について取得会社の事前申告義務を規定しています。

韓国の企業結合関連法令及び監督機構

M&Aまたは企業結合を規律する韓国法としては、「独占規制および公正取引に関する法律」(公正取引法)があります。公正取引法に関する韓国政府の監督機構は公正取引委員会であり、企業結合に係る届出、審査、是正措置などは公正取引委員会の権限となっています。

競争制限的企業結合の禁止

韓国の公正取引法第7条は”誰でも直接または特殊関係者を通じて企業結合として一定の取引分野で競争を実質的に制限する行為をしてはならない”と規定しています。

企業結合の類型

株式取得

  • 他の会社の発行株式総数の20%(上場法人の場合は15%)以上を所有する場合、または
  • 他の会社の発行株式を既に20%(上場法人の場合は15%)以上所有している者が当該会社の株式を追加取得して最多出資者となる場合

“会社の発行済株式”には株式会社の株式または合名会社、合資会社、有限会社の株式を含めます。議決権のない株式は発行済株式総数から除外し、したがってこれを取得する場合、企業結合の届出義務はないです。

役員兼任

  • 大規模会社(企業結合届出対象会社及びその系列会社の資産総額又は売上高の合計が2兆ウォン以上の会社)の役員又は従業員が他の会社の役員を兼任する場合。

系列会社間の役員を兼任する場合は、大規模会社でない会社の役職員が大規模会社の役員を兼任する場合と、社外取締役が他社の社外取締役を兼任する場合は申告対象から除外されます。

合併

  • 他社と新設·吸収·分割合併を行う場合

営業譲受

  • 他社の営業の全部又は主要部分の譲受、賃借等

“主要部分”とは、譲受または賃借の部分が独立した事業単位で営まれる形態を備えているか、譲受または賃借されることで譲渡会社の売上の相当な減少を招く場合として営業譲受金額が譲渡会社の直前の事業年度終了日現在の貸借対照表上の資産総額の10%以上または50億ウォン以上の場合と言います。

新しい会社設立に参加

  • 新しい会社の設立に参加してその会社の最多出資者になる場合

この場合、最多出資者となる場合で十分であり、引受比率は問いません。

届出対象会社基準

韓国の公正取引法がすべての会社に対して企業結合届け義務を課すわけではもちろんないです。下記の規模を満たさない中小規模の企業は、上記の方式による企業結合を行っても企業結合届出義務がないです。

  • 企業結合に参加する会社の直前事業年度の資産総額または売上高が一方は3,000億ウォン、他方は300億ウォンを超える場合

一方、資産総額または売上高規模が3,000 億ウォン、300 億ウォン以上であっても、外国会社が含まれる企業結合の場合は、これに加えて下記のような国内売上高要件も満たさなければなりません。

  • 企業結合届出対象会社と相手会社がいずれも外国会社または企業結合届出対象会社が国内会社で相手会社が外国会社である場合、その外国会社のそれぞれの国内売上高が300億ウォン以上の場合

つまり、例えば、日本の会社が韓国企業をM&Aする場合は、国内売上高の要件は必要なく、3,000億ウォン/300億ウォンの要件さえ満たせば、企業結合届けの対象となる。

企業結合届けの時期

韓国の公正取引法によると、法が定める大規模会社のみが事前申告対象で、残りの会社は事後申告で十分です。

事前届けの対象となる大規模会社とは、企業結合の一方が大規模会社(資産総額または売上高が2兆ウォン以上の会社)の場合を言います。

事前申告の対象になる企業結合の場合、韓国の公正取引委員会から審査結果が出るまでは企業結合完了行為(株式所有、合併登記、営業譲受契約の履行行為、株式引受行為)が禁止され、履行行為の禁止に違反した場合には過料が科されます。

企業結合届けの方法

企業結合の届けは、韓国公正取引委員会(公取委)に提出されますされます。事前に公正取引委員会に連絡し、届出手続を準備することが望ましいです。

ほとんどのM&A契約には、届出義務者(主に買主)が、契約締結から数日内に競争当局に企業結合届出書を提出することを確約事項(covenant)の一つとして置き、競争当局から当該企業結合についての承認を受けることを取引終結の先行条件(condition precedent)の一つにして置くのが一般的です。

罰則

企業結合届けをせず、または虚偽の申告をした者又は事前申告対象者が30日経過する前に企業結合完了行為をした場合は過料(事業者は1億ウォン、役員または従業員は1千万ウォン以下)が科されます。

競争制限審査

企業結届けがなされると、韓国公正取引委員会は、当該企業結合の競争制限性を審査することに進んでます。この審査は、30 日以内に完了しなければならないですが、公正取引委員会は90 日間延長することも可能である。

このように、最悪の場合、審査期間が最大120日になりうるというには、M&A取引当事者らに大きな負担となります。迅速な意思決定が遅れ、審査期間中に金融調達コストも増加する問題が発生する恐れがあります。これは、事後申告の場合も同様です。M&Aが終了した後、韓国公正取引委員会から意外な是正勧告が出され、取引の目的が損なわれるケースもあります。実際、韓国の2大ピアノメーカーのサムイク楽器とヨンチャン楽器のM&Aの件は事後申告の件だったが、取引終了後に下された公正取引委員会の是正措置命令によって買い入れた株式全てと買い入れた主要営業資産を売却せざるを得なかったです。

是正措置

当該企業結合が競争制限的であることが判明されると、韓国の公正取引委員会は、これを是正するための措置として、当該行為の中止(不許可)、株式の処分、役員辞任、営業の譲渡、是正命令を受けた事実の公表、競争制限の弊害を防止できる営業方式又は営業範囲の制限、その他必要な措置をとることができます。

まとめ

海外事業を行っている日本企業は、各国のM&A関連規制を熟知する必要があります。上述の通り、米国、EU、中国、韓国の企業結合申告制度は、日本の制度とは異なっています。 特に、大半の国が事前申告を義務づけており、これはM&A取引の重要な変数になるケースも多いです。したがって、韓国はではもちろん、各国のM&A法律専門家と緊密に提携してM&A取引を進める必要があります。

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“韓国弁護士が語る韓国企業とのM&A手続き:企業結合の届出”. への1件のコメント

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