韓国弁護士が解説:韓国での美容整形トラブルに遭った日本人が補償を受けるには?

韓国は、世界的に有名な医療観光の中心地です。特に美容整形の分野では、高い医療技術と合理的な費用により、韓国のクリニックは国際的な評価を得ています。毎年、多くの外国人患者が美容整形を目的に韓国を訪れ、さまざまな施術を受けています。

しかし、すべての医療行為には一定のリスクが伴います。中には、医療ミスや予想外の結果によって、患者が身体的・精神的に大きな苦痛を受けるケースもあります。

本稿では、韓国で美容整形を受けた日本人が医療事故に遭った場合や、仕上がりに満足できなかった場合に、どのような法的権利があり、どのようにして損害賠償を請求できるのか、さらに実際に韓国の裁判で認められた具体例を交えながら詳しく解説します。

<目 次>

1. 日本人でも韓国の法律によって保護されます
2. 韓国での美容整形の結果に不満がある場合や医療事故が起きた場合、どのような権利を行使できますか?
(1) 医療過失による損害賠償請求
(2) 説明義務違反による損害賠償請求
3. 実際の判例から見る、美容整形における損害賠償の事例
事例1:脂肪吸引・脂肪移植後に死亡した中国人患者
事例2:外眼角形成術後の後遺症
事例3:鼻の整形手術中に鼻中隔粘膜が損傷
事例4:鼻の非対称整形再手術の失敗
事例5:自家脂肪移植後の感染と瘢痕
事例6:ヒップ拡大施術後のフィラー移動と痛み
4. 損害賠償を請求するための手続き
5. 損害賠償の対象となる主な項目とは?
(1) 逸失利益(将来的な収入の損失)
(2) 慰謝料(精神的損害への補償)
6. 韓国での医療事故が起きたときに取るべき対応
7. おわりに

日本人でも韓国の法律によって保護されます

韓国の法律と裁判所は、国籍に関係なく医療事故の被害者の権利を平等に保護しています。つまり、日本人患者であっても、韓国人と同じ法的手続きを通じて、病院や医療スタッフに対して損害賠償を請求することが可能です。

関連する主な法律の概要:

  • 民法 第750条:故意または過失によって他人に損害を与えた場合、加害者は損害賠償責任を負う。
  • 医療事故被害救済および医療紛争調整等に関する法律 第3条:外国人も医療事故の被害者として救済の対象となる。
  • 外国人患者の誘致に関する法律 第8条:医療機関は外国人患者に対し、診断内容、治療方法、予想される副作用などを外国語で説明する義務がある。

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韓国での美容整形の結果に不満がある場合や医療事故が起きた場合、どのような権利を行使できますか?

医療過失による損害賠償請求

韓国最高裁判所によれば、美容整形を行う医師には、高度な専門知識に基づいて、施術の必要性、時期、方法、範囲などを十分に検討し、患者に生理的または機能的な障害が残らないよう細心の注意を払う義務があります。

このような注意義務を医師が怠り、それによって合併症や身体的苦痛、外見の損傷が発生した場合、患者は民法に基づく不法行為責任として損害賠償を請求することができます。

たとえば、以下のようなケースが医療過失として認められます:

  • 長時間に及ぶ脂肪吸引手術中に、バイタルサイン(生命兆候)を監視しなかった
  • 麻酔後に低酸素症(酸素不足)が起きたにもかかわらず、緊急対応が遅れた

このような医師の注意義務違反により、術後に副作用・合併症・想定外の外見の変化・身体的な苦痛などが発生した場合、それは患者にとって損害であり、損害賠償請求の対象となります。

説明義務違反による損害賠償請求

特に美容目的の整形手術では、医師の説明義務が非常に重要です。仮に施術自体にミスがなかったとしても、十分な説明がなされていなかった場合、それだけで説明義務違反による損害賠償責任が認められる可能性があります。

韓国最高裁は、美容整形を行う医師には以下のような詳細な説明を行う法的義務があるとしています:

  • 手術の必要性と難易度
  • 手術によってどのような外見の変化が起こるのか
  • 予測されるリスクや副作用

これらを患者が十分に理解できるよう説明することで、必要性や危険性を比較検討し、自ら判断して施術を受けるかどうか選択できるようにする必要があるのです。

説明義務違反の具体的な例:

  • 事前の同意なしに眼窩(目の奥)脂肪注入や目の下の脂肪注入を行った
  • 同意書に記載されていない施術(例:腹部脂肪吸引後のヒップ脂肪移植や豊胸インプラントの交換)を勝手に実施した
  • 小陰唇整形後に起こり得る感覚の低下について事前に説明しなかった

実際の判例から見る、美容整形における損害賠償の事例

事例1:脂肪吸引・脂肪移植後に死亡した中国人患者

ソウル中央地裁は、韓国で美容整形を受けていた19歳の中国国籍の女性患者が死亡した事件について、病院側の過失を認めました。

この患者は腹部・わき腹・背中から約5,000ccの脂肪を吸引し、臀部に移植する手術を受けており、手術時間は約11時間にも及びました。しかしその間、医療スタッフは一度も血圧やバイタルサインを確認せず、麻酔後に意識が戻らなかった状況でも適切な応急処置を行わなかったのです。最終的に患者は敗血症で死亡し、裁判所はこれを明確な医療過失と認定。病院に対し、逸失利益約1億4,000万ウォン、慰謝料8,000万ウォンを含む損害賠償責任を命じました。

事例2:外眼角形成術後の後遺症

ソウル中央地裁は、江南の複数の整形外科で外眼角形成術および下眼瞼手術を受けた患者が、内反症・外反症・ドライアイ・顔面の瘢痕(きず)などの合併症に苦しんだ件について、第1・第2手術を行った病院の両方に賠償責任があると判断しました。

裁判所は、手術中に不必要に下眼瞼内側の組織を切除したことが原因で、外反症や瘢痕が生じたと認定。また、手術後に外反症のリスクがあることを患者に十分に説明していなかったことから、説明義務違反による損害賠償も認められました。

この判決では、顔の傷による労働能力の5%低下が認定され、逸失利益3,600万ウォン、治療費6,900万ウォン、慰謝料500万ウォンが賠償額として算定されました。

事例3:鼻の整形手術中に鼻中隔粘膜が損傷

ソウル中央地裁は、鼻の整形手術中に両側の鼻中隔粘膜が損傷した事件において、病院側に損害賠償責任があると認定しました。裁判所は、「問題となる症状について、医療過誤以外の明確な原因が見当たらない場合は、過失に起因したものと推定できる」との判断を示しました。

事例4:鼻の非対称整形再手術の失敗

水原地裁では、鼻の非対称を治すため再手術を受けた患者が満足のいく結果を得られなかった件について、医療側の責任を認定しました。骨を切る「骨切り術(オステオトミー)」が必要な状態だったにもかかわらず、医師は耳の軟骨を移植する簡易的な手術にとどめたため、非対称は改善されませんでした。

裁判所は、患者の状態に適した手術法を選ばなかったことを医療過失とし、損害賠償を命じました。

事例5:自家脂肪移植後の感染と瘢痕

ソウル中央地裁は、自家脂肪を用いた鼻整形手術後に感染と瘢痕が発生した件について、病院に損害賠償責任があると認めました。患者は手術部位の感染により再手術と追加治療を受ける必要があり、結果的に外見上の損傷が残りました。裁判所は、感染予防対策の不備、術後対応の不十分さ、手術前に感染リスクについて説明しなかった点を理由に、病院の責任を明確に認定しました。

事例6:ヒップ拡大施術後のフィラー移動と痛み

ソウル中央地裁は、アクアフィリング(Aqua Filling)フィラーを用いたヒップの拡大施術後、フィラーが鼠径部や膝に移動し、しこりと痛みが発生した件についても、病院の説明義務違反および術後管理の不備を理由に損害賠償を命じました。

患者は強い不快感と痛みを訴え、フィラー除去と回復のための追加治療が必要な状態でした。裁判所は、リスクについて十分に説明しなかった医療側の責任を重く見ました。

損害賠償を請求するための手続き

医療事故が発生した場合、外国人患者でも韓国の正式な手続きを通じて損害賠償を請求することが可能です。

まず検討すべき選択肢のひとつが、韓国医療紛争調整仲裁院(K-medi)を通じた調整制度です。これは、民事訴訟よりも迅速かつ低コストで解決を図る方法であり、日本人でも申請が可能です。

調整が成立した場合、その合意内容は裁判上の和解と同等の法的効力を持ちます。さらに、医療機関が調整結果に基づく賠償金の支払いを行わなかった場合には、仲裁院を通じて代位弁済(損害賠償金の立替え制度)を申請できる仕組みも整備されています。

一方、調整が成立しなかった場合や、最初から訴訟による解決を希望する場合は、民事訴訟を通じて医療機関の法的責任を追及する手続きに進むことができます。

韓国に居住している日本人患者であれば、自ら訴訟を提起することが可能ですし、日本に住んでいる場合でも、韓国の弁護士を通じて訴訟を行うことができます。

損害賠償の対象となる主な項目とは?

医療事故や整形手術の失敗による損害賠償請求では、患者が実際に被った損害の内容に応じて、さまざまな補償項目が認められる可能性があります。

代表的な損害項目としては、以下のようなものがあります:

  • 手術費用の返金
  • 再手術や治療にかかる医療費
  • 韓国までの往復航空券代・宿泊費などの渡航関連費用
  • 事故により働けなくなったことによる逸失利益(将来の収入損失)
  • 精神的苦痛に対する慰謝料

逸失利益(将来的な収入の損失)

逸失利益とは、医療事故によって労働能力が低下または喪失し、本来得られるはずだった収入を失った損害のことです。

日本籍の患者の場合、韓国に居住している期間中の逸失利益は韓国国内での収入水準を基準に算出され、それ以降は日本の平均所得をもとに計算されます。日本に住んでいる日本人の場合は、すべて日本国での収入水準に基づいて計算されます。

なお、美容整形のように機能的障害がなく外見のみに影響があるケースでは、逸失利益が必ず認められるわけではありません。これは「醜状障害(見た目の損傷)」と判断され、労働能力の喪失として評価されにくい傾向があります。

しかし、外見の損傷が深刻で、職業的損失や人間関係・社会生活に影響を及ぼす場合には、労働能力の一部喪失(通常5~10%程度)として認定されることがあります。実際に、目の周囲の傷・左右非対称・外眼角外反・顔の瘢痕などによって逸失利益が認められた裁判例もあります。

慰謝料(精神的損害への補償)

慰謝料は、患者が医療事故によって被った精神的苦痛に対する賠償金です。

韓国の裁判所では、整形手術に関する事例において、おおよそ300万ウォン~3,000万ウォン(約30万円〜300万円)の範囲内で慰謝料が認められるケースが多く見られます。

外国人患者の場合、その国の経済水準(物価や所得水準)が参考にされることもありますが、これはあくまで判断の補助的要素であり、実際の金額は事故の内容や被害の程度により個別に判断されます。

韓国での医療事故が起きたときに取るべき対応

韓国で美容整形などの医療事故が発生した場合、最も重要なのは早期に十分な証拠を確保することです。

まず行うべきことは、診療記録・手術記録・同意書などの医療関連書類を病院から取り寄せて保管することです。さらに、手術前後の外見の変化がわかる写真を記録しておくのも非常に有効です。

韓国の医療法では、患者には自身の医療記録の閲覧およびコピーの発行を請求する権利が認められており、これを利用することで、事故の経緯や医療過誤の有無を客観的に立証しやすくなります。

また、再診や追加治療のために他の病院を訪れる際は、その医師から「前回の施術に関する所見書(意見書)」を取得することも推奨されます。
日本に住んでいる場合は、日本国の専門医にセカンドオピニオンや診断書を依頼するのも良い方法です。

さらに、精神的苦痛、大きな対人関係の変化、職業上の損失などについても記録を残しておくと、後に慰謝料や逸失利益を主張する際に有利に働きます。具体的には、日々の状態を記録した日記、カウンセリングの記録、診療内科の受診歴などが証拠として役立ちます。

そして何よりも大切なのは、韓国の医療事故・医療紛争に詳しい弁護士と相談することです。弁護士のアドバイスをもとに、自分のケースに合った対応方針や法的手続きを決定することで、適切な補償を受ける可能性が高まります。

おわりに

韓国で美容整形や医療処置を受けた日本の方が、医療事故に遭ったり、仕上がりに満足できない場合でも、韓国の法律に基づく保護と損害賠償の請求が可能です。

特に美容整形手術においては、医師には高度な説明義務が課されており、それを怠った場合には法的責任を問うことができます。

何より大切なのは、医療事故が起きたときに迅速に証拠を確保し、専門家の助けを受けながら計画的に対応することです。これが、あなたの権利を守るための最も重要な一歩となります。

「外国人だから」「遠く離れているから」「韓国の法律はよくわからないから」といって、権利の行使をためらう必要はありません。韓国の法制度は国籍に関係なく、すべての医療事故被害者を公平に保護しています。正当な手続きを通じて、正しい補償を受けることができるのです。

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本メモランダムは、一般的な情報提供のみを目的としたサマリーであり、本件に関する完全な分析ではなく、またリーガル・アドバイスとして依拠されるべきものではありません。

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