韓国法実務:債権執行における国際的執行管轄の問題

国際取引が活発になり外国企業や外国の方との紛争が増加している昨今、裁判で勝訴した債権者は自分の債権を回収するために最終的に裁判所を通じた強制執行を行うことになります。そして、その場合、国内に所在する債務者の不動産や動産は、債務者が外国企業であったり外国に居住する者であっても、執行対象になるとの点に異論はありません。

ところで問題は債権であります。債権は、不動産や動産とは異なり形がないため「国内に所在する債権」という概念と親しくありません。したがって、執行対象となる債権の債権者(すなわち、訴訟で敗訴した者、以下「執行債務者」という)が日本企業であったり日本に居住する者である場合、あるいは執行債務者は韓国にいるが、その債権の債務者(すなわち、第3債務者)が日本企業であったり日本に居住する者である場合、韓国にいる債権者が韓国裁判所を通じて日本にいる債務者や第3債務者に対して債権差押命令を得ることができるかの問題が生じます。これを国際的執行管轄の問題といいます。

<目 次>
1. 国際的執行管轄の判断基準
2. 韓国差押命令の実効性:日本への送達と日本裁判所の承認の問題
3. 終わりに

国際的執行管轄の判断基準

現在、韓国には、国際的執行管轄の判断基準に関する法律はなく、これに関する国際条約または一般的に承認された国際法上の原則も存在しません。この問題を正面から扱った判例もまだありません。 

これに関して、ソウル高等法院は2013年4月18日宣告2012ナ63832判決、「特定国家の執行管轄権は、自国の領土などに限定され、外国にある財産に対して強制執行権を行使するためには、条約または相手国の同意があったり、外国判決の承認などの手続きを経なければならず、そのような手続きを省略したまま、直ちに外国所在財産に対して主権を前提とする強制執行権を行使することは許されないのが一般的に承認された国際慣習法と言える」と判決し、韓国の大法院もこの判決を維持したことがあります。(大法院2014.11.27.宣告2013ダ205198判決) しかし、この事件は、滞納差押の事案であり、適用規定を異にする一般債権執行の場合には該当しないとの見解があります。

確かに、国税徴収法基本通則は、差押えの対象となる財産を「国税徴収法の効力が及ぶ地域、すなわち韓国内にある財産」に限定しており、大法院の判決も上記のような原審が説示した一般論を再説示したり、これを引用せず、単に「国内銀行海外支店に預けられた預金に対する返還債権を対象とした差押処分は、国税徴収法による差押えの対象となり得ない財産に対するものとして無効」と判示していることを見ると、上記の見解は妥当とみられます。

結局、債権執行の国際的執行管轄の判断基準を提示する国内法と国際規範が存在しない今の状況では、過去大法院が民事訴訟法の国内裁判管轄規定を類推して国際裁判管轄権を判断したのと同様に、国内執行管轄を規律する民事執行法第224条を類推して国際的執行管轄を判断するのが正しいとの見解が説得力を得ています。

民事執行法第224条(執行裁判所)①第223条の執行裁判所は、債務者の普通裁判籍のある所の地方裁判所とする。
②第一項の地方裁判所がない場合、執行裁判所は、差し押さえた債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍のある地の地方裁判所とする。 ただし、この場合において、物件の引渡しを目的とする債権並びに物的担保権を有する債権についての執行裁判所は、その物件のある所の地方裁判所とする。
③仮差押えから移転される債権差押えの場合において、第223条の執行裁判所は、仮差押えを命じた裁判所のある場所を管轄する地方裁判所とする。

民事執行法第224条は、ドイツの民事執行法を継受したものであり、日本の民事執行法第144条と同じ内容です。

民事執行法第224条を類推すると、執行債務者である日本企業が韓国に普通裁判籍がある場合(すなわち、営業所等が韓国にある場合)には、第3債務者が日本その他の外国の企業であっても韓国裁判所は差押申請を下すのが可能で、執行債務者が日本企業の普通裁判籍が韓国にない場合には、第3債務者の普通裁判籍が韓国にあれば、韓国裁判所を通じた債権執行が可能になります。

韓国裁判所の法院実務提要も、強制執行の対象が債権である場合、第3債務者が外国にいても、第3債務者に差押命令を送達するだけで差押の効力が発生し、その他執行手続き上他の実力行使が必要ではないため、第3債務者が外国にいるという理由だけでわが国の裁判所の執行裁判権を否定することはないと説明しています。

韓国差押命令の実効性:日本への送達と日本裁判所の承認の問題

韓国の民事執行法第227条は、金銭債権に対する差押命令は第3債務者に送達されれば効力が生じると規定している。これは日本の民事執行法と同じです。 韓国は、ハーグ送達協約に加入し、オーストラリア、中国などとは民事および商社に関する司法共助条約も締結しています。したがって、韓国の裁判所が日本にいる第3債務者に対して差押命令を下す場合には、ハーグ送達協約と司法共助条約に基づく送達手続きを踏むことになります。

韓国の民事訴訟法によると、外国への送達に関しても公示送達が可能です。しかし、現在の韓国裁判所の実務は、差押命令が外国にいる第3債務者に送達不能になった場合、債権者に補正命令を命じ、補正期間内に補正がなされなかったり、再送達も不能になった場合には、公示送達をせず申請を却下しています。したがって、第3債務者が日本にいる場合には、韓国債権者の立場では、韓国裁判所に国際執行管轄権が認められるとしても、第3債務者の送達住所が知らなかったり送達される可能性が薄い場合には、日本の裁判所に差押命令を申し立てる能性が高いと言えます。

これは、国際執行管轄の問題と区別される国際執行の実効性の問題であり、上記の外国への送達問題以外にも追加で考慮されるべき事項があります。日本にいる第3債務者が韓国裁判所の差押命令に応じない場合、執行債権者は、第3債務者を相手に取り立ての訴えを提起する必要がありますが、その場合、第3債務者の財産が韓国にあるなら、韓国で取り立ての訴えを提起することが許されます。しかし、韓国に財産がないとの理由で日本で取り立ての訴えを提起する場合、日本の裁判所が韓国の裁判所から出された差押命令の効力を承認するかどうかの問題が発生することです。もし日本の裁判所が韓国の裁判所の差押命令を承認しなければ、韓国の債権者は、日本で再び差し押さえ申請をしなければなりません。

まとめ

以上のように韓国の裁判所は、一定の要件を満たす場合、日本にいる債務者や第3債務者に対しても債権に関する国際執行管轄権を行使することができます。ただし、それが実際に日本での実効的な実行に繋がれるかには別途の判断が必要です。特に第3債務者が日本にいる場合が問題になり、日本への送達が失敗する可能性が高かったり、第3債務者が差押命令に服従する可能性が低い場合、日本で差押の競合や二重返済に関連した紛争が発生する可能性が高い場合、第3債務者が韓国と特別な接点がなく韓国に財産もない場合には、韓国債権者か韓国裁判所から得た差押命令は、日本において効果がなくなる可能性が高いと言えます。

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