日本裁判所による判決の韓国における効力および執行手続について

(Originally Published on 2016/03/15)

裁判は基本的には国家主権の問題であるので、他の国で下された判決が当然韓国でも法的効力が認められるのではありません。しかし、然ればとて外国ですでに判決が下されたにも関わらず韓国で裁判を再びするのは、国際民事事件の迅速かつ統一された解決という観点から見ると不適切な面があります。したがって、韓国を含む多くの国家が外国裁判所の判決が一定の要件を満たしさえすれば、自国内でも同じ効力があると認めています。これが外国裁判の承認の問題です。

韓国法が定める外国裁判承認の要件

韓国は、承認の要件を民事訴訟法で規定しています。要するに、外国の判決は①確定されたものでなければならず、②外国裁判所に国際裁判管轄権が認められなければならず、③適法な送達が認められなければならず、④判決の内容が韓国の善良な風俗と社会秩序に反しなければならず、⑤韓国とその外国間の間に相互保証というものが存在しなければなりません。

217(外国裁判の承認) ① 外国の裁判所の確定判決またはこれと同一の効力が認められる裁判(以下確定裁判などという)は、次の各号の要件をすべて要件を満たしさえすれば承認される。
1. 大韓民国の法令又は条約による国際裁判管轄の原則上、その外国の裁判所の国際裁判管轄権が認められること
2. 敗訴した被告が訴状またはこれに準ずる書面、期日通知書や命令を、適法な方式によって防御に必要な時間の余裕をもって送達を受けるか、(公示送達またこれと類似した送達による場合を除く) 送達を受け取っていないとしても訴訟に応じていたこと
3. その確定裁判などの内容や訴訟手続きに照らしてその確定裁判などの承認が大韓民国の善良な風俗やその他の社会秩序にそぐわないこと
4. 相互保証があったり、大韓民国とその外国の裁判所が属する国家において確定裁判などの承認の要件が著しくバランスを喪失せず、重要な点から実質的に差がないこと
② 裁判所は、第1項の要件が満たされたのかに関して職権で調査しなければならない。

例えば、日本に住むAが、同様に日本に住む韓国人Bに対して契約違反や不法行為による損害賠償訴訟を日本裁判所に提起し、Bが裁判所から書類を送達され、裁判に参加した後に、Aの勝訴判決が確定した場合、そのような日本裁判所の判決は上記の要件をすべて具備したものになって韓国でも効力があります。 (ちなみに、韓国裁判所は、韓国と日本の間に相互保証があると判決しています)。

韓国の善良な風俗と社会秩序に反する外国判決は承認されない

損害賠償の判決の場合にもかかわらず、韓国で効力が否定される場合もあります。その代表的な例は、米国の懲罰的損害賠償(punitive damages)の判決です。懲罰的損害賠償は、上記の要件のうち、”(iv)判決の内容が韓国の善良な風俗と社会秩序に反しなければならず”に抵触するというのが、韓国裁判所の基本的な立場でした。

しかしながら、韓国の最高裁判所である大法院は、2022年3月11日、外国裁判所の懲罰的損害賠償判決の紛争事案が、韓国において懲罰的損害賠償制度が施行されている法律領域に属すれば、他の要件を満たすことを前提に、韓国でも承認と執行が可能だとの判決を下しました。これによて、懲罰的損害賠償も制限的に執行可能になりました。

追加で読む:【最新韓国判例】韓国の最高裁、外国裁判所の懲罰的損害賠償判決の承認を制限的に許容

日本の損害賠償法は韓国と非常に類似するため、判決の承認に特別な問題はありません。もし日本裁判所が懲罰的損害賠償ではないが、韓国裁判所の実務に比べてかなり高い損害賠償額を判決した場合はどうでしょうか。韓国裁判所はそれだけでは承認を拒否しません。なぜなら、外国裁判の承認というのは外国裁判所の判決内容が具体的に妥当かどうかを審査するものではなく、あくまでも民事訴訟法が定める要件を具備しているのかを確認するに止まるのためです。 これを実質再審査禁止の原則と言います。

承認可能な外国判決の執行には別の執行判決の手続きが必要となる場合がある

前掲の例でBが判決後、韓国に逃避し、日本国内には何の財産もない反面、韓国には財産があれば、Aは日本裁判所の判決を持って韓国にあるBの財産に対する強制執行をすることができます。その手続きはAがBを相手に韓国裁判所に執行判決を申請することになります。そうすれば、韓国裁判所は日本裁判所の判決が承認の要件をすべて具備したかどうかを判断することになります。

ところが、全ての外国判決に執行判決が必要なわけではありません。執行判決はあくまでも相手が判決文上の義務を自ら履行しない場合、その履行を強制するためのもので、履行が問題にならない判決、例えば、日本裁判所の離婚判決は別に執行判決を受けなくてもいいです。 一方、日本裁判所の養育費支給の判決は、相手の履行を必要とするので、これで韓国で強制執行をするためには執行判決を受けなければなりません。婚姻無効判決も執行判決が必要であります。

外国の判決が確定される前に韓国で仮差押を申立てるのもできる

外国裁判所の判決は確定されなければ韓国での承認及び執行(強制執行)が可能だと説明したが、それなら裁判が確定される前に韓国にある債務者(被告)の財産を臨時的に差押することは可能でしょうか。韓国裁判所はそのような仮差し押さえを許容しています。したがって、外国で裁判をする場合にも韓国にある債務者の財産を予め確保する必要があるなら韓国裁判所に仮差押を申立てするのを積極的に検討する必要があります。

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